【長編小説】妖狐の娘の道すがら-ミレハ帰郷記・序- 第9話:新たな謀略 前編

【長編小説】妖狐の娘の道すがら-ミレハ帰郷記・序- 第9話:新たな謀略 前編

前のお話

【長編小説】妖狐の娘の道すがら-ミレハ帰郷記・序- 第9話:新たな謀略 前編

パメルス商会内会議室にて。

「陛下!あれほどの手練れがいるとは私は聞いていないですよ!!しかもアルスレッド最強の王下騎士団が束になっても勝てる見込みすらなかったではありませんか! どうするおつもりですか、我々のビッグビジネスを!」
 パメルスの怒号が室内に響き渡った途端、騎士の中で唯一入室を許されたユクトワールが即座に剣をパメルスの喉元に突き立てた。
「陛下の御前だ。口を慎みなさい、パメルス殿」
「よい。その剣を下ろせ、ユクトワール」
 国王の声にユクトワールは黙って剣を鞘に納めると片膝をついて深く頭を下げた。
「しかしスピネル。騎士でもないお前があの人によもや剣を振り下ろそうとはな…」
 国王は笑う。計画が上手くいかなかった事よりもスピネルの成長に感心する気持ちが上回ったのだ。
「くそっ…あいつさえいなくなればッ!カグヤは僕のモノになるっていうのに…!」
「…殿下。失礼ですが、質問をさせてください。…何故、あの孤児院にいる半獣狐族の娘にこだわるのですか?もっと魅力的で身分もしっかりした半獣狐族はこのアルスレッドにもいるはずですが…」
 

 片膝をついたままのユクトワールが顔を上げ、王子に問いかける。
「身分とか魅力的とかそういうのじゃないんだ。君も彼女を一目見れば分かるよ。まだ9歳くらいだと言うのにあんなに…あんなに妖艶な雰囲気を醸し出す女の子はアルスレッドでも見た事がない。あの子は将来絶世の美女になる。だから花を咲かす前に手に入れておきたいんだ」
 ユクトワールは反応に困った様子で畏まりました、と再び一礼する。
「…致し方あるまい。魔女の力を頼るとしよう」
国王の衝撃的な発言にスピネルは思わず椅子から立ち上がる。
「父上ッそれはなりません!あれほど魔女を嫌っていた貴方が…!」
「タタラに知られた以上、引き下がれぬ。どんな手を使ってでも…ヤツを消し、あの狐の娘を我が元へ。…ユクトワール、使いに行ってくれるか?」
「ハッ、何なりと」
「アルスレッド南にイシュバリア島があるのを知っておるな?その中央の巨大樹のふもとにその魔女はいる。”アルスレッドの使いだ”と言った後に”ユグレ・ウロオ”と口にしてほしい。それで全て伝わる。理解が済み次第、騎士団から50人を連れて早急に向かえ」
 ユクトワールは国王の話の後、頭を下げるとすぐに立ち上がり会議室を後にした。
「ユグレ・ウロオとはどんな意味合いなのでしょうか。陛下」
「まぁそのうち分かる」
 口端を釣り上げて国王は会議室から去っていく。王子も国王についていったため、会議室はパメルスのみとなった。
「…嫌な予感がしますね。少し調べてみましょうか」
 パメルスは会議室から出るとすぐに王立図書館へと向かっていく。
ユグレ・ウロオとは何の合言葉なのか…それとも―――。

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