【長編小説】妖狐の娘の道すがら-ミレハ帰郷記・序- 第14話:想いと償い

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【長編小説】妖狐の娘の道すがら-ミレハ帰郷記・序- 第14話:想いと償い

 ―――リリエルは一人部屋でベッドに向けてうつ伏せになり、枕で顔を覆っていた。
「あのバカ!考えなし!アホ!…あぁあー…なんで私を誘うわけ…わけわかんない。あれだけカグヤカグヤって言ってるんだから買い物もカグちゃんを誘えばいいじゃない…ほんとバカ」
 自分の部屋に向かってきている足音にも気づかずにギルバートへの不満をブツブツと呟く。
「な、なんか悩んでるんだね。リリエル」
「ひゃぁ!?なっ、オスロット!?ノックくらいしてよ…びっくりしたわ」
 突然の来訪者に飛び起きて、薄着だったためシーツで自分の体を隠す。
 ごめんごめん、と両手を合わせて苦笑するオスロットにジトーッとした目を向け頬を膨らませるリリエル。
「それでどうしたの?何か悩み事?」
「…なんでもないわよ。ただいつも積極的なギルバートがカグちゃんの事になると奥手になっちゃって…らしくないな、って思っただけ」
「…本当にそれだけ?」
 オスロットの一言に、へ?とリリエルは腑抜けた声を漏らす。
 リリエルはオスロットの言葉を理解すると、顔を赤くしてそれを隠すためにシーツで顔をも覆った。
「…カグちゃんと話す時と私と話す時で態度が違うのがなんか嫌なの」
 誰もに笑顔を振りまき、自分の本音を話す事がないリリエルがポツリと漏らした心の声。オスロットは開けっ放しでいたドアを閉めて、勉強机とセットで置いてある丸椅子をリリエルのベッドの傍に持ってくるとそのまま座った。
「じゃあなんでギルと行かなかったんだい?買い物誘われてたんでしょ?最近やっとギルバートも皆に打ち解けてきたんだから周りを気にする必要は―――」
「そうじゃないの。…きっと私が行ってもギルバートは…ギルはカグちゃんの事しか頭にないから…それが嫌なの。私なんかじゃカグちゃんには勝てない…同い年くらいなのに凄く可愛いんだもん…着飾ってもないし、絶対勝てないよ」
 顔は隠れて見えないがリリエルの声色が涙ぐんでくる事に気づいたオスロットは暫く黙り込む。
 そしてオスロットはリリエルをシーツで顔を隠したままの状態で彼女の頭を撫でた。
「タタラ先生が言ってた。好きな人に頭を撫でられると女の子は喜んだり安心したりする、って。僕じゃ役不足だろうけど…リリエルは可愛いと思う…少なくとも…ぼ、僕は好きだよ」
 オスロットの告白に涙目になっている顔を向けるリリエル。オスロットはリリエルと目が合うなり、目を逸らしてほんのり頬を染めている。
「オスロットは慰めてくれてるんだね」
「違うよ!」
 続けてありがとう、とリリエルが言おうとした時にオスロットはリリエルの顔を見ながら慰めの言葉と受け取ったリリエルの返事を否定する。
「僕は本当に…リリエルの事が好きになってた!だけど僕じゃダメな事も、ギルが好きだって事も前から気づいてた。だから言わなかったんだ…失敗する確率が高いなら言わないほうがいい、って。でもリリエルが悲しんでるの見たら…。おかしく、なって…」
 オスロットの感情が爆発した途端、彼も目から涙を流し始めた。
「…オスロットは全然顔はかっこよくないけど、頭良いし、優しいよね…」
「顔の事を今言う?!」
「ほんとの事言っただけじゃん」
 オスロットもリリエルもそのやり取りをしながら涙を拭うと、クスッと笑い始めた。
「その優しさに免じてお祭り一緒に行ってあげる。あと…一緒に踊ろ?」
「うん。ありがとう、リリエル」
 リリエルはオスロットに抱き着くと背中を優しく撫でる。オスロットの気持ちに気づきもしなかった事に負い目を感じながらも、その償いとしてオスロットにこれから向き合っていこうとリリエルは心の中で決意したのだった。

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